立山、剱岳(富山) 剱岳(2999m) 2021年9月19日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:59 駐車場−−01:08 登山口−−04:33 早月小屋−−6:57 剱岳 8:29−−10:05 早月小屋−−11:57 登山口−−12:02 水浴び 12:09−−12:17 駐車場

場所富山県中新川郡上市町/立山町
年月日2021年9月19日 日帰り
天候雨後晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場番場島荘前の「公式駐車場」の他に登山口付近の路側にもたくさん駐車していた。そこも満車になると登山口から約500m下った広い駐車場×2箇所の利用となる(今回はそちらを利用した)
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無ルート上部は岩稜帯の連続。岩場としては難しくないが登山者が多いことと落石の危険があるので前方の登山者との間隔に注意
山頂の展望晴れれば文句なしの大展望
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コメント3連休に台風一過を狙って早月尾根日帰りを敢行。11年前の8月に同じルートを往復した時にはあまりの暑さで死ぬかと思うほどだったが、今回は適度に涼しく快適だった。出発時は雨とガスで傘を差しての出発だったが雲海を突き抜けると満天の星空でテンションアップ! 山頂では空気の透明度は最高クラスで大展望が広がり奥日光まではっきりと見えた。3連休だけあって山頂は大賑わいだった


剱岳から見た奥日光の山々。条件が良ければ志賀高原の向こう側に明瞭に見える


駐車場出発時は雨。傘を差して歩きだす 登山口。フラッシュが石の標識に反射している
早月小屋通過時はまだ真っ暗 標高2400m付近。やっとライト不要な明るさになった
標高2450m付近 標高2730m付近
この標高(2800m)はほぼ正確 標高2820m付近
標高2850m付近でトレラン親子に追い越される 標高2880m付近。別山尾根を見下ろしている
標高2950m付近で別山尾根に合流 山頂方向は逆光で見えない
剱岳山頂。上空は雲一つない快晴! 山頂から北方稜線方向を見ている
北方稜線入口の警告標識。前回より1つ増えていた 三角点。山頂(2999m)より低い2997.1m
剱岳から見た北西〜北〜東〜南東の展望(クリックで拡大)
剱岳から見た南東〜南〜南西の展望(クリックで拡大)
剱岳から見た中越、尾瀬、奥日光の山々。これだけ見えるのは珍しいことだろう(クリックで拡大)
剱岳から見た剱岳北方稜線と後立山北部
剱岳から見た奥日光の山々
剱岳から見た白山 剱岳から見た富山平野と富山湾、能登半島
北方稜線に向かうパーティー。八峰あたりか? 別山尾根コースへ下る登山者の列
ここで早月尾根コースが分岐 早月尾根を見下ろす
早月尾根でも次々と登山者が上がってきて待ち時間が長かった 鎖場では待たざるを得ない
こんな登りの列も。今日は大賑わい ミヤマアキノキリンソウ
おそらくイワギキョウ。離れていて毛の有無まで確認できず 北方稜線が徐々に高くなっていく
チングルマの紅葉 ミヤマダイコンソウの紅葉
標高2760m付近 イワツメクサ
マツムシソウ トリカブト
ミヤマコウゾリナ ダケカンバの紅葉
ミヤマリンドウ。タテヤマリンドウは見られなかった 標高25400m付近
早月小屋を見下ろす セリ科だが細かな種類は不明
テント場 モミジカラマツ。早月小屋付近のみで咲き残っていた
早月小屋 早月小屋から剱岳を見上げる。山頂は見えていない
オヤマリンドウ
早月小屋北西側の2224m峰から見た剱岳〜北方稜線
早月小屋北西側の2224m峰から見た大日岳
標高2060m付近の小さな池 標高1870m肩の主三角点
標高1820m付近で雲海に突入。天然ミストで涼しい コース上にこの標識が点在。±50m程度の誤差あり
松尾平(標高1020m付近)は泥沼が数か所ある 早月尾根末端
登山口を尾根側から見ている 登山口。路側駐車は許されているようだ
キャンプ場の利用客の車も混じっている キャンプ場。今の時期は快適だろう
ブナクラ谷へ通じる林道。昔と違い奥にゲートがある この堰堤からブナクラ谷に下って水浴びした
堰堤には梯子あり
番場島の案内図
今回利用した駐車場。下山時は満車になっていた


・敬老の日を含む3連休の初日である土曜日は、台風が本州南岸を進んだために全国的に天気が悪く風も強い予報で、先週の常念岳より悲惨な状況になるのは確実で山はパス。翌日の日曜日は日本海側ほど天気の回復が早いとの予報で、月曜日がお休みと言うこともあり久しぶりに近場以外に出かけることに。日帰りで登れる山で駐車場の確保も比較的容易と予想される番場島から早月尾根経由で剱岳に登ることにした。

・早月尾根コースの標高差は2200m強。いつも登っている爺ヶ岳で1300m強、常念岳で約1600m、白馬岳で約1700m、赤岩尾根経由鹿島槍北峰までで約2000mなので、鹿島槍よりも200m強の加算となる。鹿島槍でそれほど大きな疲労は感じないので早月尾根日帰りは十分に可能だろう。前回(2010年8月)は早月小屋で休憩したが今回は無休憩で山頂を目指すことにした。少なくとも先週の常念岳と爺ヶ岳の連続日帰りの標高差3000mよりはマシである。あれは本当に疲れた!

・剱岳は11年前のお盆に同じく日帰りしているが、この時は西日本のどこかで最高気温が40℃を越えて当時の国内最高記録だった日であり、番場島に下山しても気温が+30℃を超えるほどで、下山時はあまりの暑さでバテて何度も休憩した苦い記憶がある。今回は山は秋に入っているため、多少下界の気温が高めでも真夏ほどにはならないだろう。天気予報では台風が抜けた後は乾いた空気に入れ替わるとのことで、気温も湿度も下がると予想され、大汗をかく心配はないだろう。逆に山頂では寒いくらいかもしれない。明日の予想天気図を見ると寒冷前線が意外と近くにあり、等圧線の間隔が狭く北東の風が強いと予想された。先週の爺ヶ岳の気温は+3℃で寒かったが、今回も秋の空気に入れ替わるのでそのくらいの気温だろうと防寒装備は多めに持つことにした。

・自宅出発直前の天気予報では日本海側でも天候の回復が遅れ気味で、日曜日の午前3時くらいまでは雨が降る予報も出ていたが、その後は広範囲に晴れの予報。もし番場島で雨が降っていても出発することに決めていた。おそらく途中から雲が切れて晴れのエリアの突入するだろう。

・長野から番場島まで一般道で約4時間かかるので、土曜日午後の比較的早い時刻に出発。白馬、糸魚川経由で富山に向かう。長野盆地は雨は降っていなかったが日本海に近付くほど雨が強くなってきた。それでも大雨ではなく道路の雨量規制の心配はない。番場島でゲートが閉まっていたら最悪であるが、その心配はなさそうだ。最後は早月川沿いの県道を上がっていき、番場島に到着する頃には薄暗くなっていた。

・前回登った時にどこに駐車したのか全く記憶がなく、番場島荘前の公式駐車場はいっぱい。登山口付近の路側にポツリポツリと駐車中の車があったが、ここに駐車して問題が無いのか判断できないので、登山口から500mほど下った広い駐車場に車を止めた。先客は1台のみ。このすぐ下にも広い駐車場があるが同じく1台しか車は無かったが、翌日の下山時には満車になっていた。

・番場島から剱岳山頂までの標高差は2200m強あり、私の足では所要時間は5時間半と予想されたが、さすがに最後までスピードを一定に保つのは難しいだろうから6時間くらいと判断。山頂到着はあまり早いとまだ前線が抜けきれておらず強風と雲の中の可能性があるので、山頂到着は朝7時を目標にして午前1時出発と決めた。

・0時過ぎに起床したが、番場島は細かな雨がまだ降っていた。まあ、これは想定の範囲内なので山頂までに消費するカロリーを考えて朝飯を多めに食って計画通り1時に出発。残念ながら傘を差さないと濡れてしまうくらいの雨の強さで、ボロ靴では浸水してしまうので少しマシな登山靴を使用。でもこいつも半年以上アルプスで使っているので内部のゴア層は劣化して防水性能は落ちているのは確実だ。でもここの登山道なら藪は無いし泥沼も無いだろう(泥沼は標高1020m付近の平坦な松尾平にあった)。

・気温は高めで半袖半ズボンでも寒さを感じないくらいで、これまあまりいい兆候ではない。帰りに暑くなっていなければいいが。11年前の記憶は皆無で暗闇の中で登山口が分かるか心配だったが、キャンプ場を過ぎてすぐ先で車道から左に分岐する個所に立派な標識がありすぐに分かった。

・少しの間平坦な区間が続いた後、階段で早月尾根の登りが始まった。前回の記憶はここまで来ても全く思い出せないのでどんな道なのか分からないが、最初から結構な急登である。片手に傘をさして片手で扇をパタパタさせながらヘッドライトの光で照らしながら上がっていく。雨だけでなくガスもかかり、ライトの光が目の前で霧で拡散して視界が真っ白になり遠くが見えないのが厄介だ。でも道はしっかりしているので外すことはほとんどなかった(1,2回は外しそうになったが)。

・最初は樹林が続き尾根の先の様子は全く見えないので、先行する夜間登山者がいるのかも全く分からなかったが、不意に2つの光が断続的に見えるようになり、少なくとも2名の先行者がいることが分かった。今日はいつもの常念岳や爺ヶ岳より長丁場なので意識して歩くペースを落としているので、先行者に追いつくとは思わなかったがあっさりと追いついてしまった。雨が降っているので2人とも雨具を着用しているが、こちらは傘で雨をしのいでいるのでおそらく奇異な姿に写ったと思う。

・この先はもう先行者はいないかと思ったら単独男性に追いつき、さらに先では若い3人組に追いついた。真夏でないこの時期でも夜中から登る日帰り登山者がいたのであった。お互いに山頂では晴れるといいですねとご挨拶。まだ細かい雨が降り周囲はガスで真っ白のままで、本当に天候が回復するのか心配な状況であった。

・高度が上がると雨は止んだがガスは相変わらずで目の前が真っ白で歩きにくい。気温は徐々に下がって扇の出番は無くなって片手が空いたのはいいこと。まだ北東の風が強いはずだが、ここでは主稜線に風がブロックされる影響か全く風は感じなかった。

・標高1700m付近でガスが薄まってきたので頭上を見上げると星が見え隠れしているではないか! どうやらこれまでの雨は雲海の雲が原因で、今は雲の上端付近まで登ってきたようだ。そして完全に雲の層を抜けると満天の星空! まだ真っ暗なので正確なことは言えないが、星の見え方からして高い上空には全く雲は出ていないようだ。これなら山頂での展望は期待できそうだ。

・体力的な面であるが、どうも先週の常念岳、爺ヶ岳の連続日帰りの疲労が完全には抜けていないようで、まだ標高差1000mも登っていないのに足がやや重い。いつもの調子なら常念岳の標高差1600mなら楽勝なのだが。まあ、それでも「途中棄権」にはならない程度の疲労であろう。多少ペースは落ちても今日は天候悪化の心配はないので、時間がかかっても山頂まで登るつもりである。

・早月小屋の位置を知らないので標高2000mくらいで出てくるかと思ったらまだ小屋の明かりは見えないが、微かに発電機の音が聞こえているのでもう遠くはないようだ。大きな岩を迂回しながら立派なステンレス製の梯子が登場。前回登った時にこんなものはあったかなぁ。相変わらず前回の記憶は全く浮かばないままであった。

・発電機の音が大きくなり、傾斜が緩んで小ピークに出ると眼下に早月小屋とテントの光が見えていた。既に標高は2200mを越えており、残すところ山頂までの標高差は800mを切っていた。山頂まであと2時間程度。小屋より上部の早月尾根では少なくとも2箇所で登山者の明かりが見えていたが、私とはかなり距離があるので追いつくことはなさそうだ。

・早月小屋のある場所は尾根幅が広がった平坦な場所で、小屋を建てるには最適な場所だった。水場が近くにあるのか不明だが、私の場合は行動中はほとんど水を飲まないので給水の必要はない。今回は200ccの水を持ってきているが、もし不足した場合に備えて小屋で見渦を購入するための100円硬貨は準備しているが、トイレ以外の用途で使ったことは無い。

・テントの間をすり抜けて右に曲がって再び尾根直上に乗る。樹林の高さが低くなり森林限界が近いことを感じさせるが、まだ背丈以上の木があり尾根の先が見通せない。登山道が斜面北側を巻く場所では一時的に樹林が開けるが、尾根に戻ると再び樹林帯に潜る。しかし標高2400m付近でとうとう森林限界を突破して頭上が開ける。周囲は明るくなりだしていくつかの星が見えるだけになっていたが、まだ空の色が見えないので晴れているのか曇っているのか分からない。振り返れば雲海で富山市街地の光はほぼ見えず、山に近い場所で1つだけ明るい光が見えるのみだった。何の光だったのかは不明。前方には登山者の光が見えたり見えなかったり。

・標高2400m付近でやっとライト不要の明るさに達し、ヘッドライトをウェストポーチに収容。左手には剱岳北方稜線のギザギザのピーク群が見えている。池平山以北は分かるが、それよりも剱岳に近いピークは分からない。あれもいつか登らなくてはいけないが、後遺症のある右目の状況で行くのはかなり厳しそうな。

・前方の登山者は少なくとも2名はいたと思うが、そのうち最初の1名(私と同年代と思われる単独女性)とは意外な遭遇でちょっとびっくり。登りではなく下ってきたのだった。もう山頂から下山してきたのかと驚いたが「山頂はこっちでいいのか?」と不意を突かれる質問にさらに驚いた。登っているつもりが逆に下っていたようだ。基本的に登り一辺倒の早月尾根、しかも森林限界を超えて好天で視界良好で前後の地形が広範囲で見えている状況で、上り下りを間違えるのは尋常なことではない。上り坂の方向を指して山頂はこっち方向だと教えると、行程が長いので先を急ぐとのことで先行してもらった。しかし結果的には終盤は私より遅く、落石の心配があるので私もペースダウンして間隔を空けざるを得なかった。おかげで時間はかかったが終盤は楽に歩けたのは良かったが。

・さらに上がるとハーネスを付けた2人組に追いついた。岩装備は北方稜線に使うものなのか、それとも剱岳登頂に備えてのものなのかは不明。こちらの2人は足取りはゆっくりでも気持ちには余裕があり、周囲の光景や紅葉し始めた高山植物を鑑賞していた。私も見習いたいものだ。

・標高が上がるに従って本格的な岩場が多くなってくるが、ここは一級の登山道なので特別な岩登りの技術が必要な場面は無く、岩登りの基本である三点支持を守れば普通に上がれる場所ばかりである。前回登った時には鎖は一切使わなかった記憶だけあるが、今回も鎖のお世話にはならなかった。穂高同様に剱岳も岩の凸凹が多いので、手掛かり足掛かりが多くて意外と歩きやすい。ただし、登山道上に細かな石が浮いている箇所があるので、特に自分の直線上の下部に登山者がいる場合は石を絶対に落とさないよう細心の注意が必要だ。逆に言えば真下に人がいる場合は行動しない方が無難である。

・話は変わるが私はまったく気にしていなかったが、剱岳山頂でヘルメットを被っていない人は昔と違って皆無に近かった。今の時代は落石のリスク、特に人による落石のリスクを考えてヘルメットを持参するのは半ば常識化しているようだ。私が普段通っている常念山脈や後立山ではヘルメットが必要そうな場所は多くはなくヘルメットの購入は考えていなかったが、行けるかどうか分からないが剱岳北方稜線や硫黄尾根の赤岳、残りの西上州の岩山を考えるとヘルメットを購入すべきだろう。

・高度が上がると予想通りに東寄りの冷たい風が強くなり、半袖半ズボンの恰好では寒くなったので少しずつ防寒装備を追加。最初は腕カバーに毛糸の帽子と手袋だけだったが、次には長袖シャツとウィンドブレーカ、最後には登山靴を脱いで風を通さない薄手のズボンを履いた。結局、山頂でもこの格好で済み、他の防寒装備は出番がない程度の気温だった。温度計は直射日光が当たって正確な数値ではなかったが、おそらく+10℃くらいあったと思う。風があっても先週の爺ヶ岳より格段に暖かかった。

・見通しのいい早月尾根は振り返ると結構遠くまで見下ろすことができるが、これまで全く見えていなかった後続が2人いた。最初は私が追い越した岩装備の2人組かと思ったがいやにペースが速く徐々に差が詰まってきた。近くまで来るとトレランの親子と判明。子供はおそらく小学校高学年程度と思われるが、父親同様に軽々と私を追い越していった。いや〜、すごい脚力だ。今回追い越されたのはこの親子だけだった。

・早月尾根上部に達すると右手に室堂からつながる別山尾根を見下ろすようになり、早月尾根と違ってたくさんの人がルート上にいることが確認できた。この天気だから今日は別山尾根は渋滞しそうだ。あちらは難所であるカニの縦這い、横這いがあるからなぁ。

・その別山尾根ルートと合流すると何人も登っているのが見下ろせる。早月尾根とは大違いの人数だ。ここまで来れば山頂は目の前だが完全に逆光で眩しくて先が見えず下を向きながら登っていく。相変わらず岩だらけだがルート上は浮石も無く快適に登ることができた。

・そしてお社のある剱岳山頂に到着。社は北を向いているので回り込んで写真撮影。山頂の人数は10人程度だろうか。この時間としては意外と多いように感じた。この時間に到着するにはおそらく別山尾根経由でも真っ暗な時刻から登り始める必要があるだろう。ヘルメットにヘッドライトを巻いたままの姿も目立つ。

・北東の風がややあるが予想よりは弱く、気温は高めで寒さは感じない。天候は快晴で文句なし! 富山側は一面の雲海で標高2000m以下は雲海の下なので富山平野や日本海は見えなかったが、それも徐々に解消して山の近く以外は姿を見せてくれた。山の上から日本海を見たのは久しぶりだ。能登半島もはっきりと見ることができた。

・秋の乾いた空気に覆われ、遠望は最高レベルだった。真っ先に目がいったのは奥日光方面。ここが見えれば視程は200km近くあることになるが、男体山から日光白根にかけてはっきりと見えていた! 最初は雲海に隠れていたが、その左手には至仏山、燧ヶ岳、平ヶ岳と尾瀬の山々が見え、さらに左には越後駒ヶ岳と中ノ岳も見えていた。右に目を転ずると八ヶ岳ははっきりと見え、その左側には金峰山〜三宝山にかけての奥秩父の山並み。雲海が低ければその左には両神山などが見えるはずだが今日は残念。富士山は頭が辛うじて雲から出ている程度で、南アルプスは甲斐駒、仙丈ヶ岳以外は雲が絡んですっきりとは見えなかった。

・後立山から常念山脈、槍穂、裏銀座、笠ヶ岳、黒部五郎岳、薬師岳〜立山にかけての北アルプス全体が見渡せる。今日はおそらくどの山も満員御礼だろう。この好天の日に登れて本当に良かった。逆に言えば常念岳等の手近な山と違って好天が確信できたからこそ剱岳に来たわけだが。おかげで山頂からの360度パノラマ展望写真は満足のいく品質となった。

・山頂には入れ代わり立ち代わり登山者がやってきてはお社の前で記念撮影していた。2パーティーが剱岳北方稜線へと入っていったが、北方稜線は通常は三ノ窓から剱岳へ登る方向に縦走するはずで、もしかしたら縦走ではなく特定のピークのみ、例えば長次郎ノ頭だけとかかもしれない。私は行く機会があるだろうか。

・見飽きることのない大展望だが、帰りは暑くならないうちに下山を始めたい気持ちがあり、山頂には1時間半の滞在で下山開始。時刻はまだ8時半なのでまだまだ続々と登ってくる。もちろん、ほとんどが別山尾根経由だろう。もう登山道は渋滞しているだろうか。早月尾根はその心配はない。

・帰りも長丁場なので下山も意識してスローペースで下ることに。実際にはそんなことをしなくても、登ってくる登山者が多くてルートが細い場所では登山者の列が切れるまで待ち時間が長かったし、岩稜帯では万が一私が石を落とした場合に他の登山者に当たらないよう落石のルート上から人がいなくなるまで待つ時間も長かった。超健脚者向けの早月尾根であるが、この日すれ違った登山者数は100人くらいいたと思う。余裕がある人もいれば疲れた表情の人もおり、体力レベルは人それぞれであった。

・落石の可能性がある岩稜帯を通過すれば安心して歩けるようになるが、ハイマツで道幅が狭い場所では待ち時間が必要な個所も。天気がいいのは有り難いが森林限界を切るまでは日陰は無く直射日光が照りつけるので暑い。今回は出発時は雨だったし強風を予想して日よけの麦わら帽子は持ってこなかったのであった。山頂では顔に日焼け止めを塗ったが、日焼けは防止できても日差しの暑さはブロックできない。下山時は「強制風冷」用の扇が活躍した。

・早月小屋では往路よりテントが増え、当然ながら今日新たにテント泊に加わった人の剱岳登頂は明日なので、テント場の連中は皆まったりしていた。明日も好天が予想されるのでテント泊には最適な日であろう。真夏と違って日差しがある日中でもテントの中にいられる気温だろう。早月尾根でテントを担ぐのはそれなりに大変なこともあり、若者グループの姿が目立った。

・展望が得られるのは早月小屋裏手の2224m峰が最後であり、その後は背の高い樹林帯を下り続ける。やっとまともな日影に入り、体を動かしていても比較的快適な体感温度に下がった。まだ登ってくる人の姿があるが、装備からして早月小屋泊まりであろう。山頂付近の岩稜帯ですれ違った人数よりも格段に少なくなっていた。

・標高1800m付近で雲海に突入、さらに涼しくなって有り難いが、さすがにここまで下り続けると足に疲労が来る。まだ登山口まで標高差1000m強あるのでいつもよりペースダウンして体力温存に努める。

・松尾平では登山道の泥沼を避けるために登山道脇を歩かざるを得ないが、往路では雨に濡れた葉っぱが体に触れて濡れないように手でどかしながら歩いたが、今は完全に乾いているので葉が体に触れても気にする必要はない。疲れた足には松尾平の平坦地はいい休憩になった。

・松尾平を通過して緩やかに下り、最後は急な階段を下って早月尾根が終了。やっぱり長かった! でも11年前の真夏と違って途中で休憩は皆無で済み、大汗をかくことはなかった。やはり早月尾根を真夏に登るのは良策ではなかったようだ。

・登山口付近の車道両側には路側駐車した車の列がずらり。どうやら路側駐車は黙認されているようだ。昨夜到着時にはここには車はほぼ皆無で駐車し放題だったのにもったいないことをしたなぁ。次に来るときにはそうするかもしれないが、おそらくここから剱岳に再び上ることは無いだろう。剱岳が次回あるとすれば小窓ノ頭、小窓ノ王、八峰ノ頭、長次郎ノ頭の北方稜線の山々なので、三ノ窓から入ることになるので入下山は黒部側になるだろう。

・今回は大汗はかかなかったが汗を全くかかなかったわけではないので最後は水浴びで〆たいところ。前回は立山川で水浴びした記憶があるが車道から川まで距離が遠いので、今回は水音が近い白萩川で水浴びすることにして、そちらに入る林道へと向かう。この林道はブナクラ峠から毛勝三山や北方稜線を歩いた時に林道終点の堰堤までマイカーで入ったが、今はゲートが設置されてマイカーで入ることはできない。ゲートが無かった昔もマイカー進入禁止の標識はあったが、私を含めて無視されていた(汗)。

・林道から川の流れは近いのだが当然ながら川に下る道は無く、間には藪があり簡単には下れない。下りやすい場所がないかと探しながら林道を進むと大きな堰堤を発見。堰堤はほぼ林道が起点で藪を避けて簡単に上に乗ることが可能で、ここから川にアプローチできそうだ。ただし、堰堤から川に下れるかが問題で、堰堤の傾斜が緩いかメンテ用の梯子が無いと下れない可能性が大。心配しながら進むと堰堤が斜めに川に落ち込む区間には鉄製の足場が埋め込まれて簡単に下れるようになっていた。ラッキー!

・川原に下って濡れタオルで体を拭ってさっぱりできた。大汗をかかなくてもこれですっきり。体を動かしていなければこの標高では涼しいくらいであった。

・堰堤を登り返して車道を下って駐車場へ。広い駐車場は既に満車で、一段下の駐車場も満車。それどころか橋を渡った先の中山登山口の駐車場も満車であった。これら全てが剱岳登山者の物というわけではないだろうが、半数以上はそうであろう。これだけ多いのは3連休と天気の影響だろう。

・こうして剱岳早月尾根日帰りは大成功だった。このルートを登るなら涼しくなった秋が断然お勧めだ。無理に日帰りせずとも常識的に早月小屋で一泊が無難だろう。体力は必要だが室堂から別山尾根経由と異なり交通機関による時間制限が無いので、早朝から日没ギリギリまで行動が可能であり、そこが最大のメリットと言えよう。あ、別山尾根より格段に人が少なく渋滞がないのもメリットだ。

 

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